BOSE Wave Music System と Wave Radio (旧製品)の聴き比べ

さた研では以前米国に滞在したときにBOSEのWave Radioを利用していた。パソコン用Panasonic社製CD-ROMドライブを繋ぎ、気に入って聴いていたが帰国時に友人に進呈してしまった。(FMの帯域が違い日本で使えないため)


Wave Music Systemを聴く

ラウベを借りるに当たって週末の楽しみ用に当時出たばかりの新製品のBOSE Wave Music System(以下、WMS)を購入し、聴いてはみたものの、上下帯域の伸びは確かにあるのだが、以前Wave Radioを使っていたときのような感動がない。一年間使えば変わるかと思いながら来たが、それほど変化はなかった。
原因は低域の出過ぎによりボーカルが引っ込んでしまうことにあるようだ。特に小音量で聴くときに、Wave Radioでは目の前に小編成のバンドが展開しているような感じがあったのだが、Wave Music Systemでは小音量でもモゴつく低音によりクリアに聞こえない。
米国滞在時はメインのシステムを置いてきてしまったのでたまたま満足できてしまったのか、それとも本当に音が違ったのか。調べたいがためにヤフオクで中古のWave Radioを落札してしまった。

親亀小亀。上が親亀(Wave Radio)、下が小亀(Wave Music System)。Wave Radioのほうがデザインが華奢で美しい。どことなくフランク・ロイド・ライトの建築を思わせる佇まいがある。



Wave Radioを聴く

さて、久々に聴いたWave Radioであるが、やはりボーカルマシンとしては秀逸であることがわかった。ごく小音量でもボーカルの口だけがぽっかりとWave Radioの前面に浮かぶ感じで聞こえる。
音は中音域に妙なピーク(癖)があるものの、総じて聞き易い。低音も下は伸びないが、必要十分なバランスは保たれており、適量でラジオを聴く際に実に邪魔にならない。ラジオの感度自体はWMSのほうが流石に上であった。(笠間では顕著な差が出る。WMSではNHKFM水戸、東京、J-WAVE、東京FM、NACK5、FM千葉を自動で捕まえるが、Wave RadioではNHKFM水戸とFM千葉だけであった)

Wave Radioを生かしてWave Music Systemをヤフオクに出そうかと思っていたのだが、2ちゃんねるで「分解して中に吸音材を入れて音量調整した」との報告発見。ダメもとでトライしてみることにする。


Wave Music Systemの低音を調整する

Wave Music Systemは背面に長いホーンが折り畳まれて入っており、その開口部は背面中央部のスリットに開いている。この開口部に何か詰めれば低音を減量できるはずであるが、CDも付いているため分解して大丈夫かどうか不安があった。とりあえずやってみることにする

<注意!>BOSE社では修理窓口担当者以外の分解を禁止しています。ここからの記述はさた研が勝手に実施したものであり、同じような効果が得られるかどうかは保証できません。また、感電するおそれもあります。
実施される場合はあくまで自己責任でお願いします。

(1)電源コードを抜く

(2)本体(底に見える黒い部分)から天板/前面パネルのカバー(白い部分)を外す。カバーは底面の5つの大きめのネジで留まっている。ひっくり返してネジを外し、慎重に持ち上げるとカバーが残り、本体が現れる

本体。上部に見えるウレタンのハチマキのようなものはカバーの共振防止か。結構いい加減である。この状態でも通電可能



ここでスピーカーユニットのネジをドライバーで当たってみると、何本かは十分締まっておらず、増し締めができることに気づく。筐体がプラスチックなので注意して締め込む。
よく「Wave Music Systemは音がいいと思うときもあり、悪いと思うときもあり、ワカラン」という意見を耳にするが、もしかしたら製品の組み付け精度に問題があるのではないだろうか。


(2)吸音材をホーンの開口部に差し込む。
今回はクイックルワイパーを一枚蛇腹に折り、割り箸でつまんで開口部にふんわりと挿入。

クイックルワイパーを挿入した状態。(写真中央)開口部は十分大きいので簡単な作業である


(3)元通りにカバーを取り付ける

木ねじ型のネジでプラスチックの筐体に取り付けるので、きっちり留まっている必要はあるが、締めすぎに注意。


試聴してみる

クイックルワイパー1枚でこれほど変わるものか、と思うくらいの激変であった。
WMSで気になっていたボワボワする低音域(NHKの男性アナウンサーの声の低いところやベースの音位の領域)の出方が随分大人しくなる。
低音の音量は減るが帯域は低くまでありつつ締まり、きちんとベースとバスドラの音の違いが判るようになる。
面白いのは低音がすっきりとすることで中高音域もクリアに聞こえるようになった。これまでは新型の音はイマイチと思っていたが見直したぞという感じである。ボーカルの息づかいまでよく聞こえる。これは吸音材と増し締めの双方の効果によると思われる。

これまではボーカルがベースに負けていたが、ようやくボーカルが主導権を取り戻したという感じである。


さた研の最終評価

さて、このWMS(低音調整後)とWave Radioでも聴き比べてみた。
WMS(調整後)は非常にナチュラルな音で聞き易い。ボーカルと演奏のつながりがよく、自然に聞こえる。これに比べるとWave Radioは中高音域に多少強調されているところが気になるともに、演奏の分離はよくなく、ステレオ感に乏しい。ただし、ボーカルが本体の前に定位して聞こえ、いかにもそこにその人がいるように聞こえる臨場感(作られた臨場感ではあるのだが)はWave Radioが勝っている。
今回いくつか試聴したが、ネーネーズやおおたか静流などの録音のよい盤はWMS(調整後)の圧勝、しかし小沢昭一や懐メロはWave Radioのほうがハマる。実際の音はどうあれ、スウィング感ではWave Radioが勝っていることも多い。ただ、全体的にみるとやはりWMS(調整後)のほうが現代的でスピード感のある音がする。

好みの順にWMS(低音調整後)>Wave Radio>WMS(ノーマル)であった。

もしWMSを持っていて1年以上経過(保証期間切れ)し、なおかつ低音のブーミーさが気になっている人は吸音材を入れてみることを試す価値はあるかと思います。非常に聞き易くなります。ただし、もともとのWave Radioの独自の臨場感は、場所が許せば両方とも持っていてソースにより聴き分けたいと思うほどであったことを付け加えて置きます。


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